料理人の独り言 ❘ 下積み編〜味見〜

料理人の独り言

まぁ、いつもお話ししますが、私の下積み時代。

俗に言う「ペーペー」と呼ばれていた頃です。

当然ですが、上の人に言われたことには、

「はい!」

と答えて、指示された通りに動く。

なかなか、

「それは無理です。」

なんて言える立場ではありません(笑)。

「そこ掃除しとけ。」

「はい!」

「皿、準備しとけ。」

「はい!」

「玉ねぎ、何mm角で切っとけ。」

「はい!」

こういう仕事は、もうアイアイサーです。

仕事としては余裕のよっちゃん(笑)。

むしろ慣れてくると、言われる前に終わっている。

「皿を準備しろ」と言われる前に準備する。

「掃除しろ」と言われる前に掃除する。

そうやって、自分の仕事を早く終わらせておく。

すると、どうなるか。

新しいことを教えてもらえるんです。

自分の仕事に追われていたら、新しいことが入ってくる隙間なんてありませんからね。

今振り返ると、

「あの頃、俺、真面目にやってたなぁ……」

なんて思います(笑)。

まぁ、そこはちょっと自分で褒めておきましょう(笑)。

ただですね。

そんな私にも、どうしても受け入れられない仕事がありました。

私は昔から、ちょっとした潔癖症なんです。

それが、味見。

料理人にとっては、ものすごく普通の作業です。

先輩がソースを作る。

味を見る。

「おい、これ味見してみろ!」

普通なら、

「おっ!味見できる!」

なんて思うのかもしれません。

しかし、私の場合。

先輩が味見をしたスプーン。

そのまま、

「はい。」

……。

いやいやいや。

そのスプーン、今さっき口に入ってましたよね?(笑)

「わ〜、好きな人と間接キッス♡」

……ちゃうねん(笑)。

私はそっと、そのスプーンを洗います。

すると先輩。

「おい!俺は汚くねぇぞ!」

いや、分かってます。

分かってるんです。

「バイキンもいないぞ!」

いやいや。

お前、バイキン見えるんかい!(笑)

……ちょっとごめんなさい(笑)。

でも、無理なんです。

どうしても無理。

味見をすること自体は全然いいんです。

ただ、そのスプーンは……洗わせてください(笑)。

当然、教えている側からすると、ちょっと気分が悪いですよね。

「俺のスプーンが汚いってことか?」

みたいになりますから(笑)。

最初の頃は、そこがなかなか辛かった。

でも、何度も繰り返しているうちに、だんだん周りも分かってきます。

「あいつ、潔癖症なんだよ(笑)」

なんて笑ってくれるようになった。

そして、そんな私にもいろいろなことを教えてくれました。

今思えば、ありがたいことです。

人って、本当にいろいろですよね。

同じ職場で、同じ料理を作っていても、考え方も違えば、やり方も違う。

自分にとって当たり前のことが、相手にとっては当たり前じゃないこともある。

逆もまた然り。

だからこそ、なるべく自分の「普通」を人に押し付けないようにしないとなぁ……と思います。

まぁ、

「味見したスプーンは洗いたい!」

という私の気持ちは、今でも変わりませんけどね(笑)。

そこは、押し付けじゃなくて……

私のお願いです(笑)。

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