下積み編 | 揚げ物をしていると思い出す話し

下積み編

 

もうかれこれ20年以上前の話です。

あるホテルに料理人として就職した頃のこと。

当時のシェフが、とにかく怖い。

どれくらい怖いかというと——リーゼント。

今で言うと“ツッパリ”という言葉が、これ以上なく似合う人でした(笑)

今じゃ完全にアウトですが、当時は普通に怒鳴られ、普通にビビり、普通に心折れてました(笑)

1日の始まりは朝の迎えから。

そして職場に着くと、ひたすら玉ねぎ、玉ねぎ、たまにキュウリ。

来る日も来る日も野菜カット。

しかもですよ。

キュウリの厚さがちょっと違うだけで——

目の前でゴミ箱にポイ。

「いやいやいや…スライサーなんですけど!?」

と心の中で全力ツッコミ。

でも実際、力の入れ加減で厚さが変わるんですよね。

あの時、人生で初めて“スライサーも甘くない”と知りました(笑)

今の立場で考えると、ああいう下積みって本当に大事で。

調理補助が優秀だと、シェフの機嫌が安定するんです(笑)

現場の空気も良くなるし、料理もスムーズに出せる。

つまり——

新人の腕=シェフの精神安定剤。

大事なポジションだったんですね。

そして、今でも忘れられない事件が起きます。

ある日、シェフが揚げ物をしていたらしいのですが、

別の仕事に追われていた私は、それに気づかなかったんです。

すると厨房に響く怒号。

「おい!!揚げ網がねえじゃねえか!!焦げるだろうが!!」

次の瞬間——ドンッ。

背中に衝撃。

振り返ると、肉の塊。

え、投げた!?今、投げた!?

一瞬、時が止まりました(笑)

さすがにこれはないな…と思いつつも、

怒りをぐっとこらえて、その場を静かに離脱。

今思えば——

よく耐えたな、自分(笑)

あのシェフ、今の時代だったら間違いなくSNSで炎上してると思います(笑)

でも不思議なもので、

揚げ物をしていると、たまに思い出すんですよね。

あの頃のこと。

そしてこう思います。

「あの肉、もったいなかったな…」って(笑)

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