山の上にいると、虫問題は常にまとわりついてきます。
カブトムシやクワガタばかりなら、お子様にも楽しんでいただけるのですが……
実際には、皆さんがあまり歓迎しない虫たちもいます。
ムカデ、ヤスデ、ゴキブリ、ハチ、カメムシ。

山の上ですから、当然といえば当然なのですが、やっぱり出ます。
部屋の外にはムカデ駆除剤をまいたり、できる限りの対策はしています。
それでも、入ってきてしまう虫たちはいるんです。
気をつけてはいるんですけどね。
そんな虫たちとの戦いの中で、こんな出来事がありました。
—スカイペンションどうだんでは、お食事はお客様ごとに個室をご用意しています。
ある日の朝食。
朝食の時間は7時30分。
「7時30分になりましたら、こちらのお部屋にいらっしゃってくださいね」
と、前日にご案内していました。
そして、朝7時25分。
朝食の準備が完了しました。
あとは、お客様をお待ちするだけです。
そのときでした。
ブ〜〜〜ン。
「へっ⁉️」
嫌な音が聞こえました。
ハチです。
しかも、こちらに向かって飛んできた。
「えっ、ちょっと待って……」
しかし、私には手と足しかありません。
網もない。
殺虫剤もない。
お客様がもうすぐ来る。
どうする?
そうこうしているうちに、ガラガラ。
お客様が、お泊まりのお部屋から出てきました。
そして、長い廊下を歩き始めます。

「どうしよう……」
頭の中は、完全にハチのことです。
しかし、そんなことはお客様には悟られてはいけません。
廊下の先にいるお客様に向かって、
「おはようございます!」
お子様には、
「おはよー!」
と、満面の笑み。
その笑顔の裏側では、
「ハチ、どこ行った?」
「まだいるのか?」
「お客様に向かって飛んでいかないだろうな?」
と、頭の中はハチのことでいっぱいです。
お客様は、長い廊下を少しずつこちらへ歩いてきます。
そして、ついに。
ハチが、私の足元にやってきました。
「……。」
踏むしかない。
靴下が汚れる。
でも、やるしかない。
お客様は、こちらに向かって歩いてきている。
ドン!!
やってやりました。
ハチを退治し、窓から外へ。
そして私は、何事もなかったかのように、満面の笑みで言いました。
「よく眠れましたか?」
「お食事、ご用意できておりますので、どうぞ!」
「ごゆっくりお食事を召し上がってくださいね!」
お客様には、何も起きていません。
朝の爽やかな時間です。
美味しい朝食を食べていただく時間です。
しかし、その数分前。
私は、朝食会場に向かうお客様の目の前で、ハチとの壮絶な戦いを繰り広げていました。
そして、何事もなかったかのように接客。
ふ〜〜〜。
セーフ!!
山の上で宿をやっていると、こういうこともあります。
虫が苦手な方にとっては、山の上はなかなか大変かもしれません。
でも、山の上に住んでいると、虫との共存は避けられません。
カブトムシやクワガタだけなら大歓迎なんですけどね。
できれば、そちらだけでお願いしたいものです。
まあ、そうはいかないのが山の上。
今日も私は、虫たちと戦いながら、お客様をお迎えしています。



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