ペンションには、いろいろなお客様がやって来ます。
フレンチ、和フレンチ、BBQ、リーズナブルなお食事付きプラン、朝食のみのプラン、素泊まりプラン。
お客様によって、ペンションでの過ごし方もさまざまです。
その中でも、特にフレンチや和フレンチのプランでは、ちょっと緊張することがあります。
それは……
料理を食べ慣れている方が来た時。
そして、
たまにですが、
料理人の方が来る時。
こういう時、小心者の私は思うのです。
「料理、お口に合うかな……」
「この調理法で大丈夫かな……」
「変なところ、見抜かれないかな……」
……まぁ、ほとんど被害妄想です(笑)。
料理を仕事にして20年以上。
それなりに経験も積んできました。
それでも、相手が料理人だと分かった瞬間、急に自信がなくなる。
そこで私は、あることをします。
自分に暗示をかけます。
「俺の料理は、どんなに食べ慣れている人でも美味しい。」
「どんな料理人にも負けていない。」
「大丈夫。」
心の中で、呪文のように繰り返します(笑)。
もちろん、料理の世界に「上には上がいる」ということは、十分承知しています。
自分より凄い料理人なんて、いくらでもいます。
それでも、その時だけは違う。
自分が一番だと思う。
そう思わないと、料理を出す手が縮こまってしまうからです。
料理というのは不思議なもので、自信がないまま作ると、なんとなく自分でも納得できない。
だから、料理を出す前だけは、
「俺が一番!」
くらいでちょうどいい。
……実際は、そんなに肝っ玉は大きくありません(笑)。
むしろ、子供の頃から小心者です。
だからこそ、暗示が必要なのかもしれません。
そして、食事が終わります。
「美味しかったです。」
「どこで修行されていたんですか?」
「このスパイス、何ですか?」
そんな言葉をいただくと、
「……よかった。」
心の中で、そっと力が抜けます。
さっきまで、
「俺の料理は誰にも負けない!」
なんて言っていたのに、
お客様から「美味しかった」と言われた瞬間、
ただの小心者に戻ります(笑)。
でも、考えてみれば、これは料理だけの話ではないのかもしれません。
経営だって同じ。
新しいことを始める時も、
「こんなのやって意味あるのかな?」
「誰か来てくれるかな?」
「本当にこれで大丈夫かな?」
そんなことを考えてしまいます。
それでも、やる時には、
「これでいい。」
「きっと大丈夫。」
と、自分に言い聞かせる。
もしかすると「暗示」というのは、
自分を過大評価するためのものではなく、
自分の力をちゃんと出すためのものなのかもしれません。
料理を出す直前の私は、
今日も自分に暗示をかけます。
「俺の料理は、どんな人が来ても大丈夫。」
……と。
そして、お客様の食事が終わる頃には、
「美味しかった」
の一言を待っている、いつもの小心者に戻っています(笑)。

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