日常編|娘に小松菜の切り方を指導された料理人

日常編

小松菜を見ると思い出す。

娘との、ある日の話だ。

娘がまだ、小学校高学年くらいだったと思う。

一応、先に言っておきます。

私は料理歴20年以上。

ホテルやレストランで働いてきました。

一応、料理人です。(笑)

そんな私が、ある日、小松菜を切っていた。

すると娘がやってきて、

「パパ〜」

「ん?」

「そういう切り方じゃなくて、こう切った方が早いじゃん」

えっ……。

娘は、それだけ言うと立ち去っていった。

いやいやいや。

ちょっと待て。

なぜ、そう切るのかを説明させろ〜!(笑)

こっちは20年以上、料理をしている。

ホテルやレストランでも働いてきた。

もちろん、小松菜だって何度も切ってきた。

ジュニア野菜ソムリエも持っている。

それなのに。

「こう切った方が早いじゃん」

だけを残して、立ち去る娘。

その後ろ姿を見ながら、私は思った。

……本当にそうなのか?

いや、たしかに娘の切り方の方が早いのかもしれない。

でも、なぜその切り方なのか。

そこを聞かずにはいられない。

気になってしまう。

一度気になると、放っておけない。

ずっと、小松菜のことが引っかかっていた。

今でも思い出すくらいだ。(笑)

そして、ある日。

小学校の2者面談を希望するかどうかの手紙が来た。

私は思った。

よし。

聞きに行こう。

娘は、学校でどんな生活を送っているんだろう。

小松菜の切り方について、あれだけ堂々と意見してくる娘だ。

学校でも、何か先生に言っているのではないだろうか。

少し楽しみにしながら、面談に行った。

すると先生は、

「娘さんは、こういうところが素晴らしくて……」

「こんなこともできて……」

と、娘のことをたくさん褒めてくれた。

まあ、親ですから。

娘が褒められるのは、やっぱり嬉しい。

気持ちいい。(笑)

先生も、できれば悪いことは言いたくないだろうし。

そんなことを考えながら、私は最後に聞いてみた。

「あの……ちょっと気になっていることがありまして」

先生がこちらを見る。

「家で、小松菜を切っていたら、『パパ、そういう切り方じゃなくて、こう切った方が早いじゃん』って言ってきたんですよ」

すると先生は、

「アハハ!」

と笑った。

そして、

「娘さんらしいですね!」

と言った。

……ん?

娘さんらしい?

私は一瞬、考えた。

あれ?

もしかして、学校でも似たようなことを言っているのか?

「こうした方が早いじゃん」

「こうした方がいいじゃん」

「それ、違うんじゃない?」

そんなことを、先生や友達にも言っているのだろうか。

私は、もう少し聞いてみようと思った。

思ったのだが。

なぜか、それ以上聞くのをやめた。

なぜなら。

気になることは、放っておけない人が、私の隣にはいるからだ。

なるほどね。

そっちの血が濃いのか〜。

そう思いながら、私は帰った。

このことは、誰にも言っていない。(笑)

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